「バーチャル・ワルツ」作曲者インタビュー
こんにちは!学習院輔仁会音楽部管弦楽団です。
2021年3月31日に音楽部公式YouTubeチャンネルにて公開いたしました、リモートオーケストラのための「バーチャル・ワルツ」において作曲・指揮・ミキシングを担当された佐藤隼斗さんにインタビューを行いました!
Q1.そもそもこの企画を始めた理由は何ですか?
元々、音楽部では毎年3月に卒業演奏会をしております。しかしこのご時世で開催中止になってしまったため、代わりに最後にみんなで何かでできないかと思ってリモート演奏の企画をしました。
が、昨年以降リモートアンサンブルというものが世の中にたくさん生まれています。4年生は一緒に演奏できるのが最後なので、企画を考える中で普通のリモートアンサンブルにはしたくないという気持ちが次第に強くなっていきました。何年後あるいは何十年後かに見たときにも「最後にみんなで演奏した」というのを思い出せるように...というのがこの企画のテーマになっています。
もともと自分がDAW(音楽編集ソフト)をやっていて、普通のリモートアンサンブル編集では難しいテンポ変化やミキシングができたので、最初はとある交響曲の4楽章をリモートで演奏しようと思ってい たんです...(笑) ただそれだと大型打楽器をリモート録音するのが不可能なので、不完全な形になってしまいます。そこで、リモートでしかできない完全なオリジナルの曲を制作して「リモート初演」をしようという企画になりました!
Q2.今回は何人くらい参加したのですか?
動画を撮れなかった人もいますが、計52人です!
オーケストラ編成では珍しいリコーダーやマンドリンパートがあるのですが、これは自宅でコントラバスを弾けないという4年生の団員になんとか参加してもらいたいと思って編成に入れてみました。
それぞれスマートフォンではなく簡単な録音機材を使って録音しています。

Q3.作曲をされる時にいつも意識していることは何ですか?
大きく二つあります。まずは先に構成を考えることです。
例えば今回のバーチャル・ワルツは、展開部 のないソナタ形式【A(ニ長調)-B(ハ長調)-A(ニ長調)-B(ニ長調)】で、A・Bともに一つのとても単純なモチーフから発展したものを使用しています。また、展開部がない代わりに、イントロのメロディを経過 部で転調させながら使っています。この単純なモチーフは曲における「主体」、イントロのメロディは「環境」をイメージしたものといったところです。
こうした要素は行き当たりばったりでは中々思いつかないので、モチーフができた時点で「どう始まってどう終わるのか」、「調性の整合性はとれるか」などをあらかじめ計算してからつくっています。
そしてもう一つは、実際に演奏されるとき楽しんで弾いてもらえるように意識しています。
具体的には、一つのパートに偏りすぎず各パートに活躍の場を与えることや、ただ同じことを繰り返すだけにならないように工夫することが大事だと思います。これも単純なことかもしれませんが、それぞれのパートが楽しいと思えるという曲はそれぞれの楽器に活躍の場があるということなので、結果的に「良い曲」が生まれやすいのではないかと個人的には思います。
特に音楽部はプロのオーケストラではないので、16分音符ばかり入れて難しくしても多分楽しめないですからね...(笑)
Q4.この「バーチャル・ワルツ」を作曲する際にはどのような思いを懸けたのですか?
いろいろありますが、とにかく卒業する4年生を中心に最後にみんなで演奏したかったという思いが 一番強かったです。本来なら卒業演奏会をして終わりというところだったのですが、社会情勢が変わっていく中で演奏会がなくなってしまって、直接会うことも憚られるという状況になってしまいました。
この曲には、そんな環境の変化と人とのつながりを投影させようと試みました。提示部のリコーダーのメロディの部分が再現部だとTuttiになっている、いきなりピアノソロになったあと徐々に演奏者が増えていく、という部分などにその「つながり」の思いを懸けました。
Q5.おのおのの音源を合わせる時に大変だったことは何ですか?
そうですね...。一つ一つ倍速編集で整えるのですが、とにかくその作業量が多かったです...!
曲のテンポは予めDAWソフトで設定していますが、各々の音源は演奏してもらった人それぞれ別に録音されているので、そのまま合成するだけだと指揮者のいないオーケストラのように音量もタイミングバラバラになってしまいます。
自分は元々ほとんどmidiでの作曲がメインなのであまり波形編集をしたことがなかったので、編集には長い時間がかかってしまいましたね...。いい勉強になりました(笑)

Q6.動画内の指パッチンにはどのような意図があったのですか?
「みんなで」というこの曲のテーマのそのものという感じです。
曲の中でどんな意味があるかはご想像にお任せしますが、提示部に1回と再現部に2回出てきます。MV の中の演出で最初と最後に1人指パッチンをしていますが、2回の中できっと感じ方が変わると思うんです。それがこの曲の中で一番表現したかったことです。
佐藤さん、貴重なお話をありがとうございました。
改めまして、2020年度卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます!
このインタビューをふまえて、ぜひ「バーチャル・ワルツ」をもう一度聴き直してみてくださいね。